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web Cafe Adrenaline vol.147
2010-9-17 (水) update
since 2000



集まる口実
仲間内で誰かが納車だと、それを口実に走りに出掛ける。
ああ、なんと愚かで素晴しき習慣か の巻











祝い事にケーキはつきもの。

新しい門出だから、
クルマ人生の節目だから、
もうすぐ参加メンバーの誕生日が近いから、などなど。

事情を知らない人から見れば、その意味不明な配色と、
英数文字でデコレーションされたそれをみんなで囲み、
その一瞬を共有し、切り分け、それぞれの腹に収める。

まるで何かの儀式みたいだが、
クルマ趣味という性質上、
たとえ気の置けない仲間で集まったとしても、
ビールで乾杯という訳にはいかない。

なので、これくらい儀式めいた遊びの方が、アルコールの力を借りなくても、
その場に雰囲気に”ちょっとだけ”酔える &、
この程度の酔いで良しとするのが白昼における大人のマナーかと。

いろんな意味で、
いつまで並走できるか判らないけど、
いろんな口実は用意しておくからお互い都合がついたら集まろう、

という共通認識はハタから見ていてじつに心地良い。

口実は・・・好日ですな。






黄色は着色料ではなく、うちの畑で採れたカボチャ100%。

猛暑が続いたせいか、今年のカボチャは独特のカボチャ臭さがなく、
このように大量にケーキに使っても全く違和感が無かった。








今回の主役は、歴代ポルシェ911の中で最も大胆な変化をしたにもかかわらず、
なぜか影の薄い996型にスポットを当てつつも、
その中においてキラリと光るエボリューションモデル、996/GT3をご紹介。





どこの自動車メーカーも、
最大のマーケットであるアメリカの要望に応えるべく
その進化を遂げてきた。

それがポルシェとて例外ではない。
とくに911の進化はアメリカの介入なくしてはありえなかった。
たぶん好きなのだろう、911のことが。

その象徴的な出来事、第一弾が、
1974年から導入された930型の「大型の樹脂製・衝撃吸収バンパー」。
スポーツカーにとってバンパーなど、小さければ小さいほどカッコイイし、
運動性能だって上がる。
諸外国からカッコわるいと陰口を叩かれながらも、注文通りに作った。
事実、作った半分以上はアメリカが買い取ってくれるので逆らえなかった。
当時、ポルシェに限らず、対米輸出を前提とされたクルマは全てこれに従ったのだ。




そして次に大きく変わったのが、この996型。

かつて911は誕生以来、純粋にスポーツ走行することを最優先し、
軽量でコンパクト、車内は少々窮屈でありながらも、
その背筋をシャンと伸ばして座るスタイルは”男の仕事場”とさえ形容された。

しかし、それがダメだと。変えて欲しいと。

いろんな理屈を並べたらしいが、僕が思うに、
要は、せまくて、息苦しいのが嫌だったんだと思う。
気持ちは良くわかる。

しかし、スポーツカーにそれを求めだすと必ず弊害が出る。

そうでなくてもRRという厄介なレイアウトでありながら、
あえて安定志向とはいえないショートホイールベースを貫き、
最終的に、その帳尻合わせをドライバーの技量に夢託す・・・

この絶妙なバランスを保ってきた911にデカくなれというのは全くもって愚の骨頂!
はっきり言ってやればいいのだ、うちは911でコルベットを作るつもりはないと!












・・・しかし、ある意味、
このアメリカの図々しさこそ、世界経済を動かしている原動力でもある、と。

で、作りましたね、ポルシェは。
ついでにエンジンも空冷をやめ、水冷にした。

しかし、この空冷をやめた理由は、アメリカうんぬんの前に、
ずっと昔からポルシェ社は時代に見合った水冷エンジンに切り替えたかった経緯がある。
これは多くのフリークがご存知かと思うが、古くは924/928/944/968など、
販路の狭い911を危惧し、借金まみれになりながらも新車種を出してはそれを試していた。

しかし、いずれも不発に終わった。残ったのは多額の借金だけ。
それが祟って’90年代前半には倒産の危機に見舞われている。

このとき、同国/メルセデスやアウディから自社の車をポルシェで作らせ、
救済の意味を込めてその代金を支払ったというのは有名なエピーソード。

そうやって思うと今更ながら、
長年にわたってポルシェを贔屓にし、
ことあるたびに911にあーだこーだ注文を付けながらも
ロングセラーにしてみせたのは一重にアメリカのお陰じゃないかと思う。

そんな賛否両論の嵐が吹き荒れる中、
1997年、全てが生まれ変わった911/996型がデビューした。

今でも覚えているのが、当時(名古屋時代)の常連客だったMくん、
当時のディーラー/ミツワの営業マンで、「今度996持ってきますから試乗会して下さい」、
とのことで、あの小さなアドレナリンの駐車場にシルバーの996が持ち込まれ、
そのとき居合わせたお客さんらと乗り回した。





















ドアを開けるとジーコ、閉めるとまたジーコ、と鳴る。
これ何の音?と聞くとMくんは、
「機密性が高いので、空気圧を逃がすために窓が少し開くんです。
ドアを閉じればすぐに閉まります、その音です」、と言う。

たぶんこんなギミックを他社が仕掛けたら、ふーんと思うだけなのに、
それをポルシェにやられると、「そんな媚は売らなくていい」、と切り捨てたくなる。
以前みたいにボディに穴開けときゃあいーじゃん、って思う。

実際に運転した感じは、
静かで、マイルドで、剛性感が高く、簡単に速い。
スカットルを低くし、フロントガラス寝かせた視界は良好。

コンサバが売りだった内装も一新され、
ポルシェには似つかわしくない「躍動感のある若々しさ」が随所にあった。
                    
もう着ている服に、排気ガス特有の、あの酸っぱい匂いが染み付くこともないし、
主張しまりくりだったエンジン音は影を潜め、(以前と比べての話だが)
とりあえずスポーツカーに乗っていることを忘れさせない程度の排気音が
「BGM代わり」、と言っても助手席の彼女に軽蔑されないくらいの仕上がりになった。

例えるなら、これまで地道に一段づつ昇ってきた階段を、
いっきに三段飛ばししたような思い切りの良さを感じた。

しかしそれは、あまりに思い切り良すぎて、
なんだか旧来のファンは置いてけぼりを喰ったような寂しさも感じがした。
そのわりに、僕らの心をぐわんぐわん揺さぶるような視覚的アピールに欠けていた。












それから3年後の1999年、このたびO氏が購入されたGT3がデビューするのである。

いろんな意味で、過去との決別を明らかにした996型らしいネーミングだと思った。
本来ならば、高性能バージョンは伝統に習って”RS”と名づけるところを”GT3”としたのだ。
※ちなみにターボの高性能バージョンはGT2。

残念ながら僕はGT3を運転したことが無いのでインプレッションは書けないが、
当時、空冷911フリークでごった返していた名古屋アドレナリンで感想を聞いてみた。

すると意外なことに大好評だった。
多くの空冷911オーナーがカーグラをめくり、
「おー、これならかっこいいじゃん」と興味を示し、スペックを読み漁った。

あのレーシングカー/GT1と同じクランクケースを使っていること。
コンロッドをチタンに、ピストンも軽量化し、9000回転までブン回るエンジン。
レースでのギアレシオの変更を容易にするために、シャフトとスプラインを介してあること。
スリックタイヤを想定し、ストラットのアッパー側でキャンバー角を変えられること。
シャーシ&ブレーキ強化は言うに及ばず。
パワーウェイトレシオ、3.75kg/psは、歴代911RSを軽く凌駕した、などなど・・・

「これ、相当いいんじゃない?やるね〜」、とその夜は盛り上がった。

なんつーか、この手のエボリューションモデルは、
口の悪い外野を黙らせるにはとっておきの切り札かも知れない、と言うより、

彼らはそれらのチューンアップをDIYでやったり、
馴染みのショップに持ち込んだりして叶えていた。
それらが全て安普請とは言わないまでも、
あとから付け足しの改造は往々にして安定性に欠いており、
やればやるほど根本的な壁にぶち当たるケースが多くみられた。

なので、メーカー自ら、
本格的なレースにも対応できる仕様を用意したことに驚いたし、
活字でしかその効果は判断できないが、そのツボのおさえどころに感心し、
最終的にはその心意気に感動したのだと思う。

そして決定的だったのが、
たぶん、あのブーメラン型のリアスポイラーだったと思う。
大き過ぎず、軽やかで、シンプルで、ちゃんとデザインされていて、
これが歴代911の中で最も地味で、単調で、特徴の無かった996に良く似合った。






イメージというのは絶大で、これ以降、僕の中でも996の印象が一変し、
素の996も、これはこれプリミティブで良いじゃないか、という相乗効果をもたらした。
まったく、あの失望感はなんだったんだ?と言わんばかりに。

まあ元来、クルマ好きは断片的に流れてくる情報に対し、一喜一憂し、
こき下ろしたりもするが、最終的には楽しむことを目的としているので、
文面から感じるより、実際はずっと他愛の無い、淡白なものでありますのでどうかご心配なく。




結局、この天下分け目の”996事件”をポルシェ社は乗り切りった。
そしてその後・・・

現在、911は997型にチェンジし、その進化は歴代911の系譜に準じている。

というのも本来、911の弟分としてデビューしたボクスター、
そしてそのクーペ版/ケイマンの2車種が予想以上にヒットした。
それは911に対し300〜400万円安という値ごろ感だけでなく、
状況によっては兄貴分たる911よりも速いという記事が雑誌を賑わした。
たしかに、馬力は劣れど、2シーターで軽量、ミッドシップというのが相当効いているらしい。

しかし年々肥大化していく911にとって、このような弟分の存在は有難いと思う。
これでもう全てを担う役目から解放されたのだから。

つづいて、フォルクスワーゲン社と共同開発したSUV、カイエンがデビュー。
メルセデスGクラス、レンジローバーといった高級SUVの市場に送り込み、
これまた順調なセールスを記録。
最近の富裕層は、お洒落でヨレヨレのパーカーを羽織り、穴のあいたジーンズを履くし、
所得格差が広がるにつけ、このクラスを欲しがる若いお母さんも増えた。
理解できる/できないは別にして、それで幼稚園の送り迎えや、マリンスポーツもこなす。
Gクラスやレンジとは一味違ったカジュアルさが魅力なんだと思うし、
おそらく空冷RRにしがみついていたら一生ゲットできない客層だったと思う。

そして、これが最もやりたかったんじゃないか?と思われるのが、
ポルシェ製の高級セダン/パナメーラ。
満を持しての登場だった。
たぶんこれは、
メルセデスのSクラスに飽きたと思うからパナメーラにしてよ、みたいなノリじゃなくて、
トヨタのセンチュリーみたいな、天皇みたいな、ある意味、象徴的なもんだと思う。
ポルシェ陣営もはなっから売れるとは思ってないだろう。
これまで、911以外での商品でコケまくり、
市場開拓で辛酸を舐めつくしたポルシェ社が、ここへきてやっと雪辱を果たしましたよ、
という意味でのマイルストーン。

で、極めつけが、つい2ヶ月前、
プラグインのハイブリット車/918スパイダーの市販化が決定したというニュース。
しかも驚くべきことに、アメリカよりも中国のマーケットを意識して話が進められているという。

なんだか・・・えらいこっちゃ!と思った。   









996GT3のデビューから10年あまり。
空冷から水冷に変わって、カウンター越しに常連客らと
頼まれてもいないのに遠い国の自動車メーカーの行く末を心配をしまくり、
それをつまみに深夜までコーヒーをすすったあの頃が懐かしい。

そして、ふと、今のポルシェの快進撃はいつからはじまったのか?
と考えてみると、
やはり、あの1997年の996型デビューから始まったと思う。

いつの世も、古い殻を脱ぎ捨て、
まったく認知されていない新しいものに生まれ変わる時、
周囲からは、多くの拒絶反応と、実績の無さからくるダメ出しを喰らう。

あのジーコ、ジーコと人を喰ったようなギミックに戸惑いながら、
両フェンダーの盛り上がりを失った前方視界に心底がっかりした。
しかし、それでもお構いなしに進化を続けた996はしたたかだった。
今にして思えば英断だったと思う。

これからも、どんどん進化するだろうし、
僕らのように、いつまでも930がどーのこーの言っている連中は
ますます置いてけぼりを喰らうのだろう。

そしてそのうち、
「マスター、ピザとコーヒー、あと充電させて!」
と言うポルシェオーナーが現れると思う。

そんな時、僕は何を思い、
アドレナリンに対してどんな舵取りをしているのだろう。

相変わらず、「愚の骨頂!」、とほざいているのだろうか。

いずれにせよ、
僕はこの場で、この先もずっと、
この愚かで、素晴しき偏愛ドラマを楽しみたいと思う。








Cafe Adrenaline / 水野雄一







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