web Cafe Adrenaline
vol.128
2010-3-23 (火) update
since 2000
着々と・3
ついに駐車場がコンクリートになる瞬間をレポート/3月11日〜17日までの記録
前号からの続きです・・・
2010年3月11日 (木)、いよいよ型枠が設置されます。
画像だけ見ると、そこそこ暖かそうですが、実際にはめっちゃ寒いです。
普段、僕の職場環境は常に20℃〜37℃くらいあり、もうそんな生活をかれこれ
修行時代も含めると20年近くやっておりますゆえ、暑さにはめっぽう強いのですが、
寒さには常識外に弱い体質になってしまいました。
こういった話はよくあるみたいで、ずっと前、テレビでみた
フランスのチョコレート職人が低体温体質になり、
真夏でも外出する時はTシャツの上にカーディガンを羽織っている、
という映像をみた覚えがあります。
つまり、素手でチョコレートを扱う仕事を続けていると、
低体温でないと都合が悪いので(チョコレートが溶けてしまうから)、
自然と、脳と体が連動して、その環境に適応した体質になるらしいとの事。
もちろん誰もがそうなる訳ではないのでしょうが・・・
人間って不思議です。
このように、くわで地面を均している風景は、実にのんびりとしたムードですが、
その前段階でに、ちゃんと回転式レーザー測量器を使って水平を出し、糸を張り、
余分な土だけを取り除き、足りない部分は補う、という繊細かつ、非常に地味な作業を繰り返しておられます。
これだけ凸凹な地面に対し、ちゃんと水平にコンクリートを流し込むという作業は、
こうした、しかるべき段階を踏んでこそ成立するもの、らしいのです。
下図/3月14日 (日)、砂利の駐車場/ラストサンデーということで?見納めツーリングでした。感謝!
3月16日 (火)、この日はpm1:30に閉店させて頂き、明日の本番に備えます。
※せっかくご来店頂いたにもかかわらず、お帰り頂きましたお客様には心よりお詫び申し上げます。
下図のように、ワイヤーメッシュを敷いていき、結束線と呼ばれる針金でつないでいくのですが、
そのときに使うのがハッカーと呼ばれる”鉄のツメ”のような棒状の道具です。
これをくるくるっと器用に回しまして結束線を縛り上げ、
ワイヤーメッシュ同士をつなげていき固定させるというものです。
これが見ていると簡単そうなのですが、いざ自分でやってみると意外と難しい。
くるくるっと回して、最後ハッカーをスルリと引き抜くのですが、こーれがなかなか出来ない。
下図/入り口・横の芝生と、コンクリートになる駐車場の仕切りとして枕木を使います。
ここでもちゃんと水平を出し、微妙な調整をしながら真っ直ぐに並ぶよう置いていきます。
上図/
ただ単に、枕木を真っ直ぐ並べるだけなのですが、
これを同じ高さで、水平に、7〜8mに渡って並べるというのは、
なかなか手間の掛かる作業でして、
※真似事でもやったことがある人ならお解かり頂けると思いますが、
これはこれでなかなか大変だぜ〜と思うのでした。
とういより、
こういった何気ない部分にも手を抜かない
鈴木氏の几帳面な性格が如実に表れていると思います。
その几帳面な性格をしっかりと受け継がれた鈴木氏の息子さん。
この数ヶ月間、彼と一緒に過ごす時間も多く、
時には一緒に「せーの!」で重たいものを持ち上げたり、
休憩時間にお茶を飲みながら馬鹿話をしたり、とても楽しかったです。ありがとう!
今回このプロジェクトのために、鈴木氏が選んだ相棒とも言うべき、
この界隈では重鎮として知られる岩田氏。
その風貌が、俳優/勝新太郎に似てみえることから、
僕は敬意を込めて、心の中でカツシンと呼ばせて頂きました。
まあとにかく、この道40年以上のキャリアをお持ちの大御所さんたちなので、
どんどん面白い話が飛び出してくるし、その素晴しい仕事ぶりはもちろんのこと、
僕のぶしつけな質問にも的確に答えてくれるので、
そばに居させていただくだけで楽しかったです。
あ、あと、こんな事がありました。
一部、モルタル仕上げの部分があって、それはちょうど日曜日のお昼時に行われました。
僕はその作業に立ち会うことが出来ず、必死にピザを焼きパスタを茹でておりました。
その間に鈴木氏がみえてモルタルを仕上げ、簡単なバリケードをされて帰られました。
で、事件は起きます。
それからしばらくして息子が大勢の友達を連れてうちに遊びに来ました。
まあ、彼らにとっては、「知らなかった」、が全てなのでしょうが、
まだ柔らかいモルタルの上を歩き、自転車で乗り上げてしまいます。
で、ようやく手も空いた僕が現場を見に行ったら彼らがめっちゃ楽しそうに遊んでいました。
まあ、僕にとっては、そこは惨状でした。
とりあえず、
彼らに一喝します。
基本的に僕は他所の子でも、結構言うべきことは言う方です。
ダメな時にダメを言う場合は、リアルタイムじゃないとリアルに感じてもらえないからです。
とうぜん彼らはショボーン・・・です。
僕はすぐに鈴木氏に電話をし、事情を説明し、
まだモルタルが柔らかく修正のできるうちに補修をお願いしました。
しばし、一喝した側と、された側が対峙し、
素晴しく気まずい空気が流れる中・・・
程なくして鈴木氏が、いつもの軽トラで到着。
普段と全く変わらない動作で運転席から降り、
当たり前のように、荷台からモルタルの入ったバケツとコテを手に取り、
普段と全く変わらない、いつもの、くわえタバコのままやってきます。
僕は思わず鈴木氏に無言で「すんません!」と両手を合わせ頭を下げます。
すると鈴木氏はニッコリ笑って、その場に立ち尽くす子供達に向かって言いました。
「靴の跡が付くもんで楽しかっただろ!」、と、満面の笑みで。
そして誰に言うでもなく、しゃがんで、淡々とコテを動かし、補修をしながら、
「まあ、子供なんてそんなもんだし、それでいいと思うよ、俺は・・・」、と。
・・・なんでか判りません、判りませんけど、僕の目に涙。
いろんなドラマが繰り広げられる中、着々と準備は進みます。
すでにコンクリートである部分と、これから流し込む部分との接点、
できるだけ段差を無くしたいと思うので10〜15cm程度掘り下げます。
で、とりあえず前日までにやらなくてはいけない作業は終了です。
泣いても笑っても明日がすべて!
さて、どーなることやら。
今回の工事に至るまでの約3ヶ月、僕自身、大したことはやってないのですが、
それでもクルーの一員として参加してきた気持ちがありましたので、
なんとなく、工事前夜はあまり眠れませんでした。
店舗の建築というのは、日々、少しづつ出来上がっていくので、
途中、疑問に思った場合、「あ、なんか、そこ、変じゃない?」、と言えるのですが、
コンクリートを流し込むという作業は、待ったなしの一発勝負。
非常にギャンブル性が伴います。
とはいえ、自分のイメージに近い仕上がりだったか?否か?に関しては、
ぶっちゃけ、流し込んだあとに控えている僕自身の作業の出来・不出来にかかっている、
と割り切って考えているので、コンクリートの流し込み自体それほど神経質になる必要はないのですが・・・
それでもまあ、今回、あまりにも職人さんたちから感動させられることが多かったため、
「んじゃあ、あとはヨロシク!頼みましたよ!」、なーんて気分にはなれませんでした。
ある意味、コンクリート施工のラマーズ方みたいな心境であり、
僕も一緒になって、「ヒーヒーフー」を言っている状態でした。(なんじゃそりゃ)
さて、ここからは野暮な解説抜きで、感動のコンクリート流し込みを、とくとご覧あれ!
・・・うーむ、なんやろ、今回、僕が痛感したのは、
老いも若きも、それぞれに一生懸命生きて、目一杯楽しんでいる、ってことの素晴しさかな。
ぶっちゃけ、
「コンクリート流し込んで、最終的に感じたことがこれかい!」、って感じだけど、
自分でも若干、戸惑っておりますが、
今はそれしか頭に浮かびません。
Cafe
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水野雄一
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