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web Cafe Adrenaline vol . 34

2005 3-8 update since 2000





なたならどーす



数年前、まだ僕が名古屋にいる頃、ある常連さんK君から相談を受けた。









「マスター、僕、もーすぐ、アメリカへ転勤することになったんすよー、で、誰か、僕のビートル、いりませんかね?」と。





「いくら?」って聞くと、

「いやぁ、金なんか貰えるシロモノじゃないっすから、いーっすよ。タダで」 とのこと。

「よし、そいじゃあ、俺が頂きます!」

「えっ?いーんすか?(笑)、言っておきますけど相当ボロっすよ」

「でも、動くんだろ?」

「うーん・・・、どかな?・・・でもたぶん動くと思いますよ。(登録)抹消してますけど。」

「書類は?」

「あります。」

「じゃあ問題ない。頂くよ。マジで。」




僕はこの頃、中津川への移転話が始まったころで、
仮に不動車を入手したところで、この先、保管場所に困ることはないだろうと思っていたし、
なにより、フォルクスワーゲン・ビートルは、いつかは所有してみたかったクルマの1つだったから、まさに、渡りに船。


話はトントン拍子に進み、
数日後、K君は、僕にビートルのキーと、書類一式を渡し、
婚約者と一緒に、アメリカ(カリフォルニア州)へ渡米した。

※余談だが、K君らが渡米した直後、2001年9月11日、あの、アメリカ同時多発テロは起きた。

それから数日後、今度は、カリフォルニア州の空港で、死傷者数名が出る銃乱射事件があり、
この時、K君らは偶然現場に居合わせ、犯人とは至近距離だったらしく、
「これでオレも終わった」、と思ったらしい。

でも、まあ、無事だったようで何より。でもテロは残念。






で、僕は、移転準備&通常のアドレナリンの業務に追われつつ、
やっとこ時間を作り、このビートルが置いてある、某・トヨタ自動車の社員寮の駐車場へウキウキしながら行った。

ここはK君の友人がこの寮に住んでおり、本当はダメなんだけど、ムリムリ置かせてもらっていたらしい。

まわりを見渡すと、前からクラッシュした911(930)、エンジンから出火したとみられる初代トヨタMR2の残骸、レストア途中で挫折し各種パーツとともに放置された(先代)ミニクーパーなど、あきらかにドナー(部品取りクルマ)とおぼしき車両が、あちこちに置かれていた。

※余談だが、現在ではこのような状況にもメスが入ったようで、
わけのわからん車両は完全に撤去され、純粋に、社員らが通勤に使うクルマだけを保管するようになったらしい。
僕が言うのもなんだけど、トヨタさん、いーじゃん、それくらい、大目に見てやってよ!(って思う。)







よくよく考えてみると、実際、K君がこのビートルで、アドレナリンへ来てくれたことは何度があったけど、
そのほとんどが夜だったし、なかなかマジマジと見る機会が無かった。

まあ遠目に見て、「けっこうヤレてるけど、味があっていいじゃん」、くらいにしか思っていなかった。

がしかし、
こうして、ちゃんと昼間見てみると、まーああああああああああ、、とにかくぅぅぅぅぅぅ汚いいいいいいいいいいい!




本来、光るべきメッキ部分は、全て錆びが浮き、そして曇り、

本来、びしっと黒くあってほしいゴム類は、すべて油分がぬけ、スルメのような珍味のような状態。

この画像ではそうは見えないが、実際には、気絶しそうなくらい雑に塗られたボディの塗装。

もちろんK君の手によるものだ。
ろくにマスキングもせず、スプレー缶でシューっと吹いただけだから、
足回りを含めたタイヤなんかもダイレクトに赤い。

例えるなら、そのへんでネコでもひき殺したみたいなペイントだ。

お約束のサイドシルのダメージもあり。
陥没こそしていないが、しっかり錆び、徐々に腐りかけている。


うわー・・・、こりゃ重症だ・・・。癌に例えるならステージ3だな、と思った。
復帰するには、それ相当の財力と、絶対に生き返ってやる!という強い意志がないと無理。

さっきのウキウキ気分はどこへやら・・・。




でも、気を取り直し、
まず運転席を開け、とりあえず開くところを全部、片っ端から開けてみた。

すると、まあ、でるわでるわゴミの山!

アーンド、妙な臭いがたちこめた・・・・・・・つーか異臭だな。これは。


普通のクルマって、内装はファブリック(布地)だから、臭いが染み付くことって十分あるけどさ、
こんな鉄板ムキダシの車内から、これだけの悪臭がするって、いったいどーよ。

悲しいかな、念のため持参した70リットルのゴミ袋がみるみる満タンになった。

そのほとんどが、このクルマならではのエンジンオイルの空き缶と、缶コーヒーの空き缶である。

おそらく漏れるオイルを、継ぎ足し継ぎ足しで走っていたのだろう。
そして、喉が渇いちゃあそのへんのコンビ二で、缶コーヒー買ちゃぁ飲み飲みドライブしたんだろう。
その量はおびただしい。

当然、飲みほした空き缶は、瞬時にK君の灰皿となる。

つまり、このクルマの悪臭の原因は、
缶の底に残ったコーヒーに、タバコの吸殻が溶け、
それが十何個も車内に設置してあり、時の洗礼を受け、
この、何ともいえない甘ったるく、それでいて、ムセかえる焦げた臭いのシンフォニーがオーケストラとなったのだ。

さしずめ、マルボロとジョージアのコラボレーション。


車内には、いっさい余分なモノは置かない僕にとって、それは「惨劇」としか映らなかった。


このメーカーオプションのようにキマッテいる「ルーフキャリア」↑ なんと、これK君のお手製。

もとは軽自動車「ダイハツ・ミラ」のものらしいが、そいつを知り合いからパクってきて、上手いこと加工して装着したそうな。

しかし、ちらっと見える運転席の赤い「コブラ」のバケットシート。

これがファンタスティックに臭いのよぉ!もー!なんかベタベタするしぃー!


この画像で見る限り、
オリジナルは水色で、次に薄いピンクで、そして赤に変身したんだなってことがわかる。まるで地層だ。

内張り?そんなもんねーよ!

よーく見て、ドアの内側、水が溜まってるから。

パテを盛った跡があるってことは、過去に、ココに穴が空いてまして、とりあえず塞ぎましたよーってこと。

でも、根本的に雨水の浸入を直してないから、また、こーやって水が溜まってまーす!ってこと。(怒!)

だったら、いっそ、穴なんか空きっぱなしの方が、かえって水が溜まんなくて良かったのにー!ってこと。(怒怒!)

余計なことすんな!ってこと!(怒怒怒!)




しかし、立派なナルディのウッドのステアリングが奢られていた。

が、ホーンボタンは「米アップルコンピュ―タ社のリンゴのマーク」! こんなんあるんだ。

なんかよーわからんけど、似合ってるな。こーゆーのをミスマッチとでも言うのか。



助手席に鎮座しているのが、釣りに使用されたと思われるクーラーボックス。
オフコース!この中からも悪臭が交響曲を奏でております!怖かったので、このまま不燃物として処理。

つーか、K君にゃー悪いけど、このクルマ自体、燃えないゴミじゃん!(←言い過ぎ)


このクルマ、ぱっと見た目、
’50〜’60年代に生産された通称「ビンテージタイプ」と呼ばれるスタイルになってるけど、実は’70年代のもの。

だから本当はブサイクなんだけど、前後のフェンダーと、ライト類を小ぶりのやつに整形し、
ついでにダブルバンパーにして、なかなかグーな感じに仕上がっています。

だが、それらは、ぜーんぶ「リプロ物」→リプロダクション製品、つまり社外品だから、品質が悪い悪い。
触ってみるとわかるんだけど、部品ひとつひとつ肉厚も薄いし、メッキの仕上げもテキト―でザラザラで、すぐにサビます。

笑ったのは、給油口。

本来このクルマは、ちゃんとフロントのフェンダーに給油口があるのに、
わざわざビンテージ仕様にするために、パテで埋め殺し、フロントのトランク内に設置してある。

だからガソリンスタンドに行くたびに、わざわざクルマから降り、フロントのトランクを空け、
荷物にガソリンが掛からないように、慎重に入れてもらうのである。

もし、あふれかえったら、即刻 ジ・エンド。

まあ、作りが作りだから、スタンドの兄ちゃんにもあんまし強く言えんし。困ったもんだ。




エンジン、掛けてみたけど、案の定、目覚めてくれません。

そういえば、K君が言ってたな、「そろそろスターターモーターがヤバイっす」と。

キーをひねっても、ウンともスンとも言わねーってことは、そーゆーことか。











正直、ここまでコンディションが悪いとは思っていなかった、というのが率直な感想。

僕が判断するに、このクルマを合法的に、
そして最低限、普通に走らせてやるのに投資しなければならない金額は、ざっと見積もって40万円〜。

陸運局への登録料やら、車検の整備代やら、車検代やら、税金やら、保険料やら・・・
まあ、これらは必要経費だからしゃーないとしても、
まだまだこの先、金の掛かりそうな危険な香りがプンプンしている。
あと30万円使っても焼け石に水だな。

ただで貰っても、70万円も使ってたら何してんだかわかんない。

ビートルの専門ショップに行って、「予算70万円でビートルください!」って言ったら、
けっこうシャンとしたものが手に入るわな。ある程度の保障も付いてさ。

で、万が一、手放す時でも、ある程度のリセールバリューだってつく。


やっぱ、それなりに古いクルマを購入する場合は、(今回はもらったんだけど)
現役で動いているタマじゃないとダメだね。

何年も車検を通してなかったり、抹消されて久しいようなクルマは、安く売られているぶん、
いざ乗ろうと思うとイヤになるくらい金が掛かる。

金だけじゃなく、同時に、時間も取られる。

どこか壊れりゃ、1週間、2週間なんて平気で掛かる。
自分で直そうが、プロに任せようが、時間は掛かる。



「でもクルマ好きの人って、そういったトラブルも含めて楽しんでるんでしょ」、という人がいる。

バカ言っちゃいかん!

そんなもん無い方がいいに決まってる。

さも楽しそうに話しているのは、そーでもしなきゃやってらんないから、笑い話にすり替え、
自虐的なエッセンスを加え、お互いの傷を舐め合っているだけの事。

また家族には、クルマが壊れました→金が掛かります→落ち込んでます=じゃあ、そんなもん辞めちまえ!ってことになるから、良識ある大人のマナーとしてニコニコしてるだけの事。

だってそうだろ、
普通のクルマを運転することだって十分にリスキーなわけで、
(自分も含め)人の命を奪ってしまうかもしれない行為じゃん。

なのに、プラス、
「あーこのクルマ、そろそろエンジンブローしそうだなあ」とか、
「あれ?なんかガソリン臭いぞ」とか、
「カラーン、あ、なんか落っこちたぞ!俺のウィンカーレンズかなっ?」とか、

運転中に、普通の人が感じなくれもいいストレスにさらされていること自体、決して望むべきところではないよ。

どんなヘンテコなクルマに乗ってるオーナーだって「無事コレ名馬」と思っているはず。

「トラブルを含めて楽しい」というより、「トラブルに馴れないと楽しめない」というMな世界やね。














よほど骨董価値のあるクルマなら別だけど、
そうでもないクルマで、中途半端にカスタムされた個体じゃ、どーしょーもない。

今まで理屈ではわかっていたけど、実際に経験してみると、キツイ!のひと言。










で、しばらくしてから、追い討ちをかけるように、寮の人から「来月中に撤去してください!」との連絡があった。

まいったな〜、とはいえ、まだ整地も始まっていない中津川へ移送することもできず、

正直、現時点でこのクルマは僕の手には負えない、と判断していたから余計に辛い。



なんだか子供の頃、捨て猫を拾ってきて、親に「うちでは飼えません!」と言われたのと似た心境だ。


ひとまず知り合いに「里子」を申し入れるも、
コンディションを説明すると、みんな閉口し、「うちでは飼えません!」であった。

タダより高いものは無い、を、そっくり当てはめたような話に、首をタテに振る奇特な人はおらず、
さしずめ、それが自分だけだったことに今さら気付き、「ああ〜俺もまだまだ青いなぁ」と、遠くを見つめるのであった。



「強制撤去」のタイムリミットが近づくも、なんら進展の無いまま時間が過ぎ、
このままじゃ泥沼だなと思い、
あまり乗り気じゃなかったが、ネットオークションに出してみることにした。

自分の手で、このビートルの「廃車手続き」をするよりマシ、と考えた末の苦渋の選択。



参考までに、これくらいボロいコンディションのビートルの相場を調べてみると、案の定、「捨て値」であった。

だいたい1万円とか2万円の世界。

まさに鉄クズ、グラムいくら、の世界。

海の向こうのK君にゃ悪いが、とりあえず、1万円スタートで決行。

すると意外な質問メールが寄せられた。

「あのルーフキャリアだけ譲って欲しい!」とのこと。

値段は、千円とか、二千円で!という、こちらの心情からすると、じつに有難迷惑な話だ。

いまさらパーツとして切り売りしてる暇は無く、事情を説明し、メールをくれた数人には丁重にお断りした。

しかし、「だったら五千円まで出すよ!」と、ある1人にしつこく言われ、
「だったら車体ごと買ってよ!」と言い返すと、「それはムリ!」と突き返され、
なんだか本格的にミジメな気分になってきたところで、ポーン!と落札が決まった。


落札者は、石川県で印鑑の製造販売をするという、50歳くらいの陽気なおっちゃん。

落札価格、1万1,000円也。


引渡しについて、本人と直接電話で話をしたのだが、
とにかく声がデカく、妙にハイテンションで、すぐに話が脱線する、典型的な困ったキャラの人だ。

僕は何度も、おっちゃんに話の腰を折られながら、
引渡し場所である、某トヨタ自動車/社員寮の場所と、日時を伝え、
念のため、最寄のインターから、現場までの地図を親切丁寧に書いてファックスした。

で、当日、
僕は、約束よりも1時間くらい早く現場に着いて、
気やすめ程度ながら、何もしてやれなかったビートルに、最初で最後の洗車をしようと思っていた。

が、しかし!なんと行ってみたら、あろうことか、
陽気なおっちゃんは、勝手にビートルを自分の積車にのせて、すでにタバコを吹かしているではないか!

「いやあ、昨日の夜に家をでてさ、ずっと下道で来たんだよ。
そしたら結構早く着いちゃってさ、ぼけっと待ってるのも退屈だったからさ、
ドアノブをカチャカチャやってたら開いたんで、それーって積んだんよ。わははは。」

「ぜんぶ下道で来たんですか?」と聞くと、

「そうそう。 だって、1万円のクルマに高速代なんか払えねーよ、わははは。」



「・・・・」と、絶句した僕。







なんか、つくづく、このクルマとは縁が無かった、と思った。




























現場からの帰り道、僕はユーノスを運転しながら、

本当にこれで良かったのか?

他にもっといい選択肢は無かったのか?

K君が帰ってきたらどう説明する? など、

とめどもない自問自答をしながら、これから開店を待つアドレナリンへと向かった。






こんなこと言っちゃいけないけど、正直、なんだか、こんな日は、めずらしく店をやりたくないなぁと思った。


























背後にあるユーノスのトランクの中で、使われなかった洗車グッズが、カタカタと揺れていた。





























こんな時、あなたなら、どーする?






























カフェ・アドレナリン.店主/水野雄一



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