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Web Cafe Adrenaline vol.5

はやいもので、当ホームページを始めてから半年が経ちました!

通常の営業をしながら、月1回の更新を宣言してしまった「カフェ・アドレナリン・ホームページ」。実際にやってみると結構大変だ!
途中、完成まじかのデータが全部消えてしまう事件もありながら、今回で5回目を数える。
少しづつではあるが、「らしくなってきたのではなかろうか?」と、ひとり喜んでいる。
わずかな時間を見つけては、みなさんにお伝えしたい事を思い浮かべ、忘れぬうちに、それっ!と打ちまくる。たまに、最初に書こうと思っていた文と、出来上がったものとのギャプに困惑することもある。当然、ひとつのテーマに対して、答えはひとつとは限らないが、書く前に「自分は、どの立場でものを言い、何を伝えたいのか、」ということは決めることにしている。ところが、書いている最中に、いきなり話が脱線したり、コントロール不能になったりと、なかなかゴールに辿り着けない(自分の)ローテクな思考回路に悩まされる。イラストだって描けば、YAHOO!オークションに行って何か面白そうなものはないかな?と物色もする。(←だからダメ!)
そんな超・効率の悪い作業の末にやっと出来た「web Cafe Adrenaline」をネット上に転送する時の気持ちは、出来の悪い生徒をもった担任の先生が、卒業式に思う「さびしさと安堵感」にも似ている。

これが毎月かと思うと、自分でもよくやるよ、と思う。

これからも、内容に手を抜くことなく、読んで楽しいローテク・ホームページを連載していきますので応援をよろしく!

また、感想や御意見などありましたら、どんな些細なことでも結構ですので、わたし宛にメールしてくださいませ!


カフェ・アドレナリン・店主/水野雄一 2000年6月1日


■メニュー物語/生ビール■



LOWENBRAU レーベンブロイ/グラス\600/ジョッキ\700/樽\2000

ここ十数年、ビールを飲まなかったという日がほとんどない。別にアルコール依存症ではないのだが、明日から飲んじゃダメ!と言われたら泣くしかない!それこそナンパを禁止された羽賀研二の心境であり、カメラを取り上げられた林家ぺーの脱力感と同じだ。
だから当然、自分の店に置くビールにも、こだわりがある。居酒屋のように、べらぼうに出るわけじゃないので、品数としてはあまり多くはないが、どれも厳選されたラインナップである。
ほのかに甘く、それでいてシャープな味わいのハイネケン」、「すっきりライトな喉越し、コロナビール」、「俺は濃いビールしか飲まねェぜ、という方には、エビス」そして昨年から「キリン一番絞り」に変わって、当店の生ビールを担当することになった「レーベンブロイ」である。
もともとはドイツ産なのだが、現在、「生」に限り、アサヒビールがライセンス生産を行っている。知名度こそ低いものの、そのクオリティの高さには思わず、ニッコリしてしまう。
ひとくち飲むと、あまりの軽さに拍子抜けするが、後味はたいへんしっかりしており、香りも豊かである。最近多い、ただ軽いだけのビールに終わっていない。それにはちゃんと理由があるし、それなりのコストも掛かっている。
某ビールのCMで鈴木京香が「泡までうまい!」と言っているが、このレーベンブロイと同じ理屈である。通常のビールには、泡立ちをよくするためにコーンスターチが含まれている。別に悪いことではないが、私のように何杯も、何杯も、何杯も、何杯も、飲みたい患者にとって、微量に含まれたコーンスターチくん達が徐々に「こんにちは〜僕達の仕事は泡の底上げで〜す〜ごめんね〜」と、シャープなキレあじを邪魔してくるのが気に入らない!なんとなく、口の中がネバネバする感じが嫌だ。しかし、麦芽100%の泡にはそれがない、本当にクリアな味が楽しめる。
レーベンブロイは缶や瓶でも売っているが、絶対に生に限る!この御時世に、巨大ビールメーカー・アサヒが採算度外視で、高いライセンス料まで払って、こつこつ作っているのだから、これを飲まない手はない!こう言っては失礼だが、おとなしくスーパードライばっかり作ってりゃ、もっと安定経営だろうに、と素人ながらに思う。いったい、このレーベンブロイを作ることによって、アサヒというビール会社にどんなメリットがあるのかは知らない。ただ言えるのは、今まで看板商品のスーパードライが好きでなかった私が、レーベンブロイのおかげでアサヒという会社に興味を持ち、これからどんな商品が出てくるのだろう、と期待するようになったのは事実だ。

とかく濃い味のものが持てはやされる昨今、味覚障害者が急増しているという。せめてこのレーベンブロイの味の判断くらいは感じ取って欲しいと願うマスターである。いつまで作られるかは知らないが、あるうちに飲んでおけ、と言いたい!百聞は一見になんとやらで、この機会に是非とも御賞味頂くことをお薦めする。

名古屋でも取扱店はごくわずかだ。

レーベンブロイ・生をよろしく!



■初任給で買ったレコード■

SOPHISTICATED SWING Julian"Cannonball"Adderley Recorded 7.8.February 1957


あなたは初任給で何を買いましたか?

わたしの場合、ひとり暮らしを始めていたので、パーッと使った記憶はない。家賃も光熱費も食費もすべて捻出しなければなりませんでしたからね。それでも、とりあえず親父とおふくろに現金一万円づつプレゼントして(くーっ、泣けるね!)、そのままレコード屋へダッシュ!(あんまり泣けない)当時住んでいた近所の新星堂というお店のジャズコーナーで、どれにしようかあれこれ物色していると、普段は無愛想な店員が、どうしたことか満面の笑みで近づいてくるではありませんか!

「お客様!只今、当店では当社が企画しました復刻版フェアーをやっておりましてェ、絶版になってしまった数々の名作を、可能な限り、オリジナル盤に近い状態で復刻生産することになりましたッ!是非ともこの機会をお見逃しなく!完全限定盤ですから!」

とまあ、かなり気合の入ったセールストークに圧倒されながらも、彼の差し出すパンフレットを見てマジで驚いた!全部で10タイトルはあっただろうか、しかもそれら全部が相当なレア物ばかり!これなら店員の鼻息の荒さもうなずける。そしてその中でも特にレアだったのが、今回の「ソフィスケイテッド・スイング」である!なぜか?それは、このアルバムが発表された1957年当時の常識では、「内容はともかく、ジャケットがダメ!」だったらしい。セックスアピールが強く感じられ、下品であると判断されたため、初回プレスを少し生産しただけで絶版となる。これのどこが!?と思われるかもしれないが、そういう時代だったのだから仕方あるまい。これはまだいい方で、とあるアーティストのジャケットは、白人女性がシャワーを浴びている写真で、ちょうど胸のあたりから、すりガラスになっている。だから実際には肩から上しか露出していないにもかかわらず、発売禁止となる。その後、そのレコード会社が慌ててジャケットだけを作り直して発売したが、これが最悪!なぜか「トラの顔の絵」になっているではないか!タイガーマスクじゃねーんだからさ、たのむよホントに!

とまあ、こんな感じで、当時はいろいろと厳しかったようだ。(というより羞恥心があったと言うべきかもね・・)

話を本題に戻そう、私はぜんぜん知らなかったのだが、この新星堂という会社、実は過去にも絶版アルバムを何度かリリースしていたらしい。しかもそのクオリティーの高さには定評があるという。ちゃんとマスターテープからダビングし、肉厚の重量盤にプレスし、ジャケットもわざわざ印刷元のフィルムからの作成するのだから文句の付けようがない。しかし!誠に残念なことに、この「ソフィスケイテッド〜」に限ってジャケットの元フィルムが紛失してしまって無いというではないか!な〜にやってんだ、という感じだが、無いものは無いので仕方なくコンディションの良いジャケットを借りてきて転写することになる。ところが、簡単に転写と言っても、ひとクセもふたクセもあるようなジャズマニアをターゲットにした企画だけに適当なものでは許されない!ある程度のレベルまでは仕上げねばならない!じゃあ、そのレベルとはいったい何なのか?女性の方には軽蔑されるかもしれないが、そんなこと言わずに読んでもらいたい。それは「パンティのラインのくっきり具合」なのだ。何をかくそう、実はこのアルバムにとって最大の付加価値であり、焦点である。オリジナル盤でも、わずかにしか写っていないようなラインをそれとわかるように転写するのは至難の業だ!もし、そのラインが出せないならば復刻する意味なし!とまで印刷業者は脅されたらしい。今のようにデジタル処理などあまり無かった10年以上前の話である。
さて結果はいかに?興味のある方は現物を見せてあげます。一回、1000円で。(←うそ、2000円)(←全部うそ)

結局、その復刻版は、これを含めた3点を買うことにした。それでも当時の自分にとっては一度に3枚も買ったことなど無かったから十分に満足だったし、無愛想な店員もニコニコ顔だった。それどころか、その店員に感謝しなければならない。つい最近、中古レコード屋を覗いてみると、なんと、このアルバム(もちろん復刻盤の方)が、でーん、と壁に掛けてあり、プレミア価格で売っているではないか!購入した時の倍のプライスだ!おそるべし新星堂!


■ジュリアン・キャノンボール・アダレイ■1928〜75■フロリダ州生まれ■アルトサックス奏者■彼の演奏は、とにかく豪快である、そして底抜けに明るい。ところが、この「ソフィスケイテッド〜」を録音していた頃はあまり恵まれた環境でなかった。所属レコード会社としては、「第2のチャーリーパーカー」を育てたかったあまり、キャノンボール自身の個性はあまり重視されていなかったと言う。そう考えると、「真紅のメルセデスベンツ300S・カブリオレのお尻と、美女のお尻」のジャケットは、結構適当にあてがわれたものだったのかな?とも思えてくるのだが、結果的には「この問題のジャケット」をキャノンボールは見事に自分のものにしてしまう立派なプレイを披露してくれているから流石だ!当店では、滅多にかからないファンキーで、豪快なレコードだが、私にとっては思いで深い一枚である。無論、リクエストがあれば喜んでかけるぜ!


■ひと夏の経験・フィアット500■

高校時代の友人であるS君と、フィアット500の話である。

運転免許取得後、S君がはじめて購入したクルマがトヨタの「コルサ」だった。蛇足かもしれないが念のため説明すると、「カローラII」のことである。その昔、「私をスキーに連れてって」という映画がありましたよね、その中で主役の三上博史が乗っていたのが赤いカローラIIだったんですよ、リトラクタブルの。なぜかS君はえらく気に入ってしまったようで、ポーンと買ってしまう。個人的には「どーせだったら、高橋ひとみのセリカGTーFOURにしろよ!」と思ったが(わけわかんない人はゴメンなさい!)本人が納得して買うのだから仕方ない。ところが!1年も乗らないうちに手放してしまう!しかも、その原因が私にあるというのだから聞き捨てならない!
S君曰く、「水野の家で、フィアット500のビデオ見た帰りにさ、ウチの近所のクルマ屋で見つけたんだよ!赤いフィアット500をさ!それでつい・・」って、おーいおい、ちょっと待てよ!なんだよそれ!
・・しかし、衝動買いのスペシャリスト・S君のまえにはなすすべも無く、あとの祭りとなった・・。そして、問答無用の、

「悲劇と喜劇が乱舞する、チャオ!フィアット500・大・泣きべそ馬鹿祭り」が始まることになる!


気温30度を超える日もめずらしくなくなり、いよいよ夏本番となったある日、ついに納車されたとの連絡があったので急いで現場に急行した。クルマで30分くらいのところだ。「馬鹿だよな、あいつ、」と思いながら汗ばんだ手で(当時の自分の愛車)、セリカXXをかっ飛ばした。すると彼の自宅前に、ちょこーんと佇む真っ赤なフィアット500を発見!「うわっ、ほんとに買いやがった!馬鹿だねェ・・」と思った。そして早速クルマから降りて、まじまじと見ることにした。無論、あら探しのためだ!ここはひとつ心を鬼にして、ガツンと言わなくては!冗談じゃない・・
「うーん、ちょっとこれ、ひどくない?この塗装、コテコテじゃん!、あちこち錆びもあるし、内装も汚いし!ドアのちり合ってないし!オイル漏れてるし・・で、これいくらで買ったの?」

S君にとっては、予想外の展開だったのだろう。見るやいきなり、ケチをつけられ、買った値段を聞かれては・・・、さぞかしキツかっただろう。案の定、S君の表情はすっかり曇り、蚊の泣くような声でつぶやいた。「・・150万・・」、えーっ、ひゃくごじゅうまん!!!これでェ??高いよぉ、絶対!絶対高いよぉ・・
「・・・でも、気に入って買ったんだからいいだろ!」とS君反論。ミーン、ミーンとアブラゼミがやかましく、気まずい空気が流れた。

・・・・で、これ、エンジン掛かるの?と聞くと「掛かる!」と言い放った。じゃあ、その辺ちょっと走ってみようぜ、ということになり、ふたりとも小さなフィアット500に乗り込んだ。どうせ、走り出せば、うんざりするに決まっている、「ほれ見たことか!」と言うつもりでいた。

シートベルトは?と聞くと、「そんなもん無いよ!」と、言い放たれた。じゃあ、エアコンは?と聞きたかったが、これ以上気まずくなるのはゴメンだと思い聞くのはやめた。S君は細いシフトレバーがニュートラルになっているか確認し、おもむろにイグニッションキーをひねり、スターターレバーを手前に引っ張る。(これがフィアット500のエンジンの掛け方!)キュウキュキュ・・・。キュキュキュ・・。「あれ?おかしいな・・さっきは掛かったんだけどな・・」と焦るS君、狭い車内にむさ苦しい野郎が2人が、滝のような汗をかいているさまは、あまりにも見苦しい・・・。キュウキュウキュキュ・・・。キュウキュウキュ・・背中がヒタヒタになるくらい汗が出る・・・・あーつーいー・・・キュウキュウキュ・・・・ここで一発、オーバーケーのQ!と言ってみようかと思ったが、さすがにそこまでの勇気は無く、おとなしく心の中で、神様、早くエンジンが掛かりますように、とお祈りすることにした。
すると、突然、ヴォオオォオンンン!!!!と雄叫びを上げながら空冷2気筒500ccが目覚めた!パラララララララララと、軽快なアイドリング始まる。

予想以上に、頼もしいアイドリングだ。エンジンの調子はイイみたいだ。ようやくS君の表情にも明るさがもどり、「よーし!」と言いながら、サイドブレーキを倒し、1速ギアに入れ、じわっと、アクセルを踏むと、ボッ・・ボ、ブォオオーン!オオオーンン!!!と勢いよく発進した!これまた予想以上に活発な走りに驚いた。たった500ccで、むさ苦しい大人2人を乗せて、グングン加速していく。住宅街を走り抜け、表通りに出て、3速から4速へ!オロロロロロロロロロロッ!!!!!!エキゾーストノートが炸裂している!いよいよスピードものってきた!トロトロ走る国産高級サルーンをひらりひらりとパスしながらフィアット500は走る!日本の道路って、こんなに広かったっけ?と思うくらいフィアット500は小さい。ブレーキはぜんぜん効かないけど、気持ちよく加速することにかけてはセルシオなどの敵ではない。それも排気量はセルシオの8分の1でだ。これで十分とは言えないまでも、宝の持ち腐れよりはずっと健全で、賢いクルマだと思った。
信号待ちで並んだ中年のおじさんは、窓ガラス越しにこっちをじっと見ている。いかにもクーラー効いてますよ〜、という感じでおじさんの髪の毛はふわふわ〜となびいている。ここでひとつ発見!フィアット500の夏は止まったら地獄だ!自分でも心配になるくらい汗が止まらない!さっきから、どれほどの汗をかいただろうか。と同時に、笑いも止まらない!なぜかおかしい!とうとう暑さで壊れたのかと思うくらいげらげら笑いながら走り回った!そして、知らぬ間にアイドリングが2000回転くらいになっており、減速時に2000回転をきるとストールするようになった。だから、常に2000回転以上キープしなければならず、車内は異常にやかましい、パラララララララララ!!!というアイドリングの音と、ヤケクソのげらげら笑いが混同し、クレイジーな状態になった!そのころはキャブレターの仕組みなどぜんぜん知らなかったので、エンジンルームを覗いてもチンプンカンプン。おそらく、調整ができていないだけだと思うが、そんなこと知るよしもなし、である。

とにかく走りに走った!楽しかった!「このクラクション、どんな音がするんだよ」と聞くと、S君は「こんな音だ!」と言ってホーンボタンを押した!「ミィン!ミィン!」通行人からの冷ややかな視線は痛かったが、女子高生たちの「きゃあ、かわいい!」という黄色い声援はうれしかった!勘違いしてはいけないのだが、S君と私は上機嫌であった。そして気づけば、私はこのオンボロ・フィアット500がすっかり気に入ってしまった!と同時に、S君のことがすごく羨ましく思え、あんなに悪口を言うんじゃなかったと、少し反省した。フィアット500自体を否定するつもりはなかったが、そんな簡単に今までのクルマを売り払い、このフィアット500に飛びついたS君の気持ちが理解できなかった。そういう軽々しい考えで買うクルマじゃないだろ、と思っていた。けど、こんなに楽しそうなS君を目の前にして、なんとなくその気持ちが理解できたし、これでよかったと思えた。

街はすっかり夕暮れて、S君の家に戻ることになった。途中、渋滞に合ったり、工事中のガタガタ道を走りながらも、フィアット500は快調に走った。しばらく走ると、横にぴったり付けてくるタクシーがいた。異常に接近してきている。なんだろう?と思った瞬間、その運ちゃんは窓から顔を出し、大きな声で、
「にーちゃん!あんたのクルマ、パンクしとるでェ!」と叫んだ!
ゲゲゲっ!マジかよ?慌てて路肩に停めて見てみると、右フロントのタイヤがおもいっきりパンクしていた!これには、さすがに参った!ちょっと笑えなかった。とりあえず交通量の多いところだったので、路地裏に移動し、スペアタイヤに交換することになった。正直言ってドッと疲れたが、そんなことは言ってられない、フロントフードを開け、スペアタイヤを探す!探す!探しに、・・さが・・・・・・・・・、な・い・・・・ぞ・・。(ま、まさか、無いなんてことねーよな!と思った。)「・・あっ、そ、そういえば後部座席の下じゃなかたっけ!」と、気丈に振舞うS君であったが・・・・、・・・・ない・・ね・・。カーペットまでめくろうとするS君の後ろ姿は痛々しかった。・・(あちゃ〜・・・)
とりあえず買った店に連絡をした、が、つながらない。何度かけてもダメだった。しばし呆然と立ち尽くした。無言のまま、どよ〜んとした重苦しい空気が流れる。なんのダジャレも思い浮かばない・・。そして、仕方なくJAFを呼ぶことにした。

待つこと1時間、すっかり夜になってから、JAFのレッカーがやって来た。なんで市内で1時間も待たされるんだよ!と思ったが、「すみませーん、お待たせしましたー!」と元気のいい兄ちゃんのひとことで、まあいいか・・と思った。と同時に、この兄ちゃんの顔、一筆書きで描けそうだな、とわけのわからないことも思ってみた。(結構、疲れもピークに・・・)

作業は着々と進み、ほっとひと安心。このあと、どこに晩飯を食べに行こうかと話がはずんだ。ところが、そんな楽しみもつかの間!またもやビックリ発言!!

「えー、申し訳ありませんが、このクルマには、けん引フックが付いていないようです。・・残念ながら用意してきたレッカーでは運ぶことは出来ません!」

ななな、なーんやそれ!!じゃあ、どうするんでぃ?と聞くと、「いったん会社に戻って、積車に変えてきますので、もうしばらくお待ちください。」ぬぬぬぬ、なにおおおおおっ!!さすがのS君もぶち切れそうだ!
「それなら別の人に積車を持ってきてもらえませんか?そうすれば、半分の時間で済むじゃないですか。」と聞くと、「あいにく、ドライバーは全員出払っておりますので、それはできません。」・・・・・もーいや!、だったら最初から積車で来いよぉ・・と思ったが、あーだこーだ言ってもはじまらないので仕方なく待つことにした。

更に40分後、ようやく、よーうやく、本当にようやく!到着した。が、今度はなんと、10トンクラスの巨大トレーラーみたいな積車でやって来た!もう笑うしかない!本当にこんなデカイのしかなかったのだろうか?それとも、ウケをねらってきたのだろうか?それならそれで面白いじゃないか!とことん付き合うぜ、今度はどんな仕掛けがあるんだ!えーっ!この巨大トレーラーが変形して、ロボットになって、目がピカーッと光って、一筆書きの兄ちゃんがラジコンのプロポで遠隔操作して、「たのんだぞ!ロボジャッフ!」かなんか言って、グギギギギギっと両手でフィアット500を軽々と持ち上げ、グオオオオと空に飛び立つ、ってのはどうだ!え!どんなことがあっても驚かないぞ!うおおおおおお!

これほど全ての歯車が狂うと、全てのものを疑いたくなり、人間不信にもなりかねない。

現実には、トレーラーは変形せず、フィアット500は最後の力を振り絞って、自力で荷台によじ登り、手際よく足回りをワイヤーで固定され、出発準備完了である。
一筆書きの兄ちゃんは元気よく、「それでは、ご自宅までお届けしてきます!」と、トレーラーはゆっくりと動き出した。万感の思いである。涙が出そうになり、ドナドナを唄いそうになった。いや、唄っていたはずだ。

そのあと、ふらふらになりまがら中華料理に行き、こんな日もあるさ!と、ビールを飲んで、ぎょうざ、唐揚げ、八宝菜に、ニラレバ炒め、海老シュウマイに、マーボー飯etc・・。しこたま食べて、タクシーでS君の自宅まで帰った。たしか午後11時くらいだったと思う。こうして、長い長い暑い暑い一日が終わった。



・・・・・と、ここまでが「喜劇」の部分である。まあ、これくらいのことは大した問題ではない。「楽しいこと」と、「そうでないこと」を比較すれば、圧倒的に「楽しいこと」の勝ちなわけだし、「楽しくないこと」もひっくるめて、いい思い出だと言っていい。しかし、この話はこれからが本当に恐ろしい「悲劇」なのである。私もあまり思い出したくないのだが、少なくとも当HPを御覧の皆さんには同じような悲劇に遭って欲しくないので書くことにした。頑張って読んでくれたまえ!



その後、S君は購入した店に行き、くわしく事情を説明し、クレーム修理を依頼した。ところが驚くべきことに店側の対応は、「修理の見積り書」が届き、なんとそれには10万円近くの請求予定金額が書かれてあった。
これはいったい、どういうことなのか!明細を見てみると、
「ホイールの破損のため、新品ホイールに交換の場合、7万円。キャブレター調整代金2〜3万円。」とある。
なんと、S君のフィアット500がパンクした原因は、ホイールの破損だったということだ!わずか10キロくらい走行しただけでホイールが割れる!そんな馬鹿なぁ!おまけにキャブ調整に3万円?納車直後なのに?いったい、どーなってんの?
S君の一生の頼みということで、わたしも一緒にその店まで話をしに行くことになった。ところが、その店に着いて愕然とした!「お、おい、S、・・おまえ、この店構えを見て、よく買う気になったな・・・」
「いかにも、うちは悪徳中古車販売店ですよ!文句ありますか!」という店だった!(ま、店名は伏せておくことにしよう・・)正直言って、帰りたくなった・・・。これじゃ、まともな話なんかできるわけない。
念のため、再度、S君の気持ちを聞くと「もう、手放したい・・」という。わたしも同感だった。それなら、さっさと引き取ってもらって、現金にして、安心できる別の店で買い直したほうがいい!OK!それでいこう!よーし、ガラガラーッ、すいませーん!(うわっ、しまった!めちゃめちゃ怖いじゃん、オールバックじゃん、ヴェルサーチじゃん、手首に水晶がじゃらじゃらじゃーん・・・)しかし、(怖いけど)せっかく来たんだし、とりあえず、とりあえず、は、こっちの言い分を聞いてもらおう・・、話せば解ってもらえるよ、人間同士なんだから、・・・

なんだか、札付きの不良に金をまきあげられ、それを取り返しにいく中学生の心境である・・・・。

ところが!その悪徳商人は意外と素直だった!「あーそうですか、わかりました。」とドスの効いた声で、うるし塗りみたいな趣味の悪い電卓をパチパチっと叩いて「それじゃ、これで引き取らせていただきましょう」と、電卓の数字を見せた。すると!
・・・いち、じゅう、ひゃく、せん、まん・・・・ん?・・・・「よ、よ、よ、よんじゅうまんえん・・・!?」
150万円が、40万円!たったの40万円?!まじかよ!「すみませんが、140万円の間違いじゃないですか!」

ジュボッ!(金色のライターで煙草に火をつける音)、ふーっ、(と、煙を吐き出し、ギロリとにらみを効かす)、「馬鹿言っちゃいかんよ、どこの世界に、ホイールの割れた、動けなくなったクルマを140万で買い取るところがあるんだ!あ!もともと手の掛かるクルマだと承知の上で買ったんだろ!それをおたくが面倒見れなくなって、引き取って欲しいって言うからこっちは40万と言ったまでだ。それがいやなら、よそで直すなり、買い取ってもらえばいい!ちがうかね?あ!」

うーん、さすがは百戦錬磨の悪徳商人!敵ながらあっぱれな責任転換だ!さも、こっちが因縁を付けたかのようである!まずは販売価格に見合った商品を置くのが常識だろ、と言いたい!しかし、ある意味、悪徳商人が言うにも一理ある。正直言って、今回の騒動の根本は、S君の軽率な衝動買いに端を発する!(厳しいことを言うようだが・・)自分でクルマの良し悪しを見極めることも出来ないのに、安易に販売店を選択し、信用し、トラブルを招きやすいクルマを買ってしまい、アフターメンテナンスの確認もしないまま、いっぱいいっぱいのローンを組み、半ば詐欺同然の被害に遭う・・・・。
世間ではよく聞く話だが、実際に身近で起こると非常に情けない。もちろん騙す方も悪いが、今回の彼の場合、「騙されたあんたも悪い!」と言うほかない。金額が金額なだけに、もうちょっと慎重に買い物をすべきだ!

結局、もう一度よく考え直してくる、ということで、悪徳中古車屋をあとにした。

その後、S君は自分の判断で、赤いフィアット500を悪徳中古車屋に返し、そのかわりに「8年落ちのトヨタ・カリブ」をもらったという。
つまり結果的には、150万円でボロボロのカリブを買って、ほんの少しの間、まさしく、「ひと夏の経験」としてフィアット500のオーナーになった、ということである。(ちなみに200万円もあれば当時の新車のカリブが買えた。)ま、S君にとっては、いい薬になったと思うし、自分で自分のケツを拭いたのだから、これ以上とやかく言うつもりもない。



もう10年以上も前の話である。

実際にフィアット500というクルマ自体、そんなに敬遠するようなクルマではない。ただし!ある程度の「知識・財力・忍耐力」は必要だ。どんなに愛情があっても、残念ながらそれだけではキツイ。なにもフィアット500に限ったことではなく、この手の趣味性の強いクルマを所有するには、「愛情なんかあって当たりまえ」の世界である。そういう意味では「子育て」と似ているかもしれない。親になったからには、自分自身、しっかりとした考えを持ち、子供の長所を見つけ、それを伸ばすサポートをしてやり、悪いところがあれば修正してやる。当然、金もかかるだろうし、全てが計画どおりに進むはずもない。

愛情?そんなもん、あって当たりまえである。




■フィアット500■生い立ちは、先月の「スバル360」とよく似ている。第二次世界大戦で敗戦国になったのはイタリアも日本も同じ。よって、貧乏な国は「経済的に優れた、シンプルで、使い勝手のよい小型車」を作り、いっぽう、勝ったアメリカは、その逆で「ゴージャス、極まりない、」クルマを作った。(ま、それはそれで魅力的だが)
当時、フィアット社の技術者であった「ダンテ・ジアコーザ」が発案した、メカミニマム・マンマキシマム、というコンセプトものと、1957年に誕生する。その後、時代のニーズによって細かなところが改良され、18年間も生産された。ちなみにS君が所有していたのは、Rというモデルである。(1972〜75まで作られた最終型。大幅なコストダウンがされたためか、マニアの評価は低い。)現在、中古車価格の相場は80〜300万円くらいとされ、比較的タマ数も多く、最近では安心できる専門ショップも増えた。が、相変わらず、ルパン三世を見て買いに来ました!と言う方も少なくない・・・。ここまで、キュートで、愛されやすいクルマならではの宿命なのか・・。

※使用上の注意をよく心得た上、ご購入ください。と言いたい。



■次回の予告■

役立つ!正しい焼肉の食べ方講座

近頃どーも、調子の出ないあなた!そんな悲しいニクラーにおくる、ミート・レッスン!

韓国の古くからのことわざに、「生まれた子には箸と、取り皿を!」という教えがあります。(←うそ、ない。)



7月1日、更新です!



お楽しみに!



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